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    ■つるつる温泉事件簿

    フクジュソウ
    フクジュソウ(2年前に撮影)

    また塩別つるつる温泉へ行ってきました。車で約1時間、だいたい3か月に2回のペースで行ってます。この温泉へ行けば、何かしら面白いことが目の前で展開されていました。露天では鹿が出たりエゾリスが出たり、洗い場でお兄さんの背中で絵画鑑賞したり、更衣室に子どものウンチが転がっていたり、カギを落としてオロオロしているおじさんのカギを探すのを手伝ったり・・・。

    ここのところ、温泉ではこれといった出来事がありませんでした。

    もう去年の話になりますが、ちょっとしたことはありました。露天風呂には私を含めて4人ほど入っていました。そこに、親子が入ってきたのです。若いお父さんの優しそうな声と子どもの声がしました。

    さぞかし子煩悩って感じのお父さんかなぁ、なんて思っていると、まず、子どもがはしゃぎながら入ってきました。その後に、「こらこら騒ぐんじゃないよ」と言いつつ、歩く美術館のようなお兄さんが入ってきました。前も後ろも手も足も首も、キャンバスを無駄なく使った、全身カラフルな美しいお兄さんでした。

    ゆったりのんびりしていたお客さんは、ギョギョギョっと緊張を取り戻し、しばらく凍てついていました。という、温泉で凍りついたお話。

    まあそんな小さな話があって、この4月12日、ようやく、ちょっとした事件に出くわしました。

    露天風呂に、推定年齢65歳と50歳の関係性の分からない2人が入っていました。若い方が相づちを打つパターンが続きます。
    「いやぁ、最高だな」
    「いいっすねー」
    「つるつるするなー」
    「つるつるしますねー」
    「なんでだろなー」
    「なんでですかねー」
    風がやや強めでしたが、晴れて、心地よい春の空気。
    「ほんっとに最高だなぁ」
    「いいっすねー」
    「ここはホントの露天だからいいなぁ」
    「いいっすねー」
    そこに見慣れない大きめの鳥が飛んできました。羽の一部に青いラインが入った鳥で、頭が茶色、尻尾が黒、白とグレーも散りばめられた奇麗な鳥でした。
    「おおお、バードウォッチングまでできるなんて、やっぱりいいなぁ」
    「そうですねー」
    「あれは何だろ、カケスか、カケスだな」
    「何ですかね」
    「・・・カケスじゃないか、何だろな」
    「・・・」
    「・・・メガネ忘れちゃって、よく見えないな」
    「メガネがないと見えにくいですよね」
    「メガネ置いてきちゃったから・・・」
    と言って、若干腰を浮かせて、メガネを取りに行こうかな、という仕草をしました。そして、まあいいか、的な感じでまた湯船に浸かりました。
    その鳥は至近距離にもいて、それが羽ばたいた時に、オヤジさんは「ここにもいたか」と驚いた様子でした。
    (ここの露天はいろいろ動物が出現するので私は古いメガネをかけて入っています。温泉はメガネのコーティングをボロボロにするらしく、今使っているメガネで入ると、数回で度が合わなくなってくるそうです。メガネ屋店員談)

    その鳥はあとで調べてみるとミヤマカケスというカケスでした。オヤジさんの知識は合っていました。特徴のある鳥だったので分かったのですね。

    「あ、あそこにさフクジュソウの黄色い花が咲いてるな」
    「え、どこですか。あ、ホントですね」

    私はそれを聞いて思わず探してしまったのですが、見つけられないのです。
    『いったいどこに黄色い花がひとつだけ咲いているというのだっ』
    どこを見てもありません。それで、おかしいなぁと、ずっと探していました。

    「ああやっぱ、最高だなここは」
    「そうですねー。あ、ここは以前と比べてどうですか」
    「ん、変わってないよ。昔とおんなじ」
    オヤジさんは久々にここを訪れ、ここを知らない若い人を連れて一緒に来たようです。

    そして、2人が露天風呂から上がっていった後、しばらくして、20~30メートル先の山の裾野にフクジュソウらしい花を、私はやっと見つけることができました。枯れ葉が太陽光を反射して、その枯れ葉のスキマから花が見えていました。色が馴染んで見えにくかったのでした。

    そして思ったのです。
    「あのオヤジ、メガネなくても良く見えてんじゃん!!」

    メガネなくてもよく見えていた事件でした。